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東京高等裁判所 昭和62年(行コ)38号 判決

控訴人(原告) 西岡文博

被控訴人(被告) 東京都教育委員会

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴人は、「原判決を取り消す。被控訴人が控訴人に対し昭和五七年一一月一日付けでした原判決添付目録記載のサーベル二本の刀剣登録拒否処分を取り消す。訴訟費用は、第一、第二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人は控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の主張及び証拠関係は、次のとおり付加するほかは、原判決事実摘示及び当審記録中の書証目録記載のとおりであるから、これを引用する。

(控訴人)

一1  銃刀法一四条の「刀剣類」の意義は、同法二条二項の定義規定に従って解釈されるべきであり、登録制度の歴史的経緯から偶然的に日本刀を対象に発展してきたにすぎないのに、外国刀剣が当然にその対象外であると解釈することには何ら合理性は認められない。また、現行登録制度が日本刀を中心として確立したとの立法事実は尊重に値するとしても、それをもって外国刀剣の登録を認めないことの合理性は何ら説明されていないのであり、被控訴人が原審で外国刀剣の登録を認めないことの合理的理由として主張した事実はいずれも根拠に乏しい。

2  そして、銃刀法一四条五項の委任により同条三項の鑑定の基準を定めた登録規則四条二項が登録対象である「刀剣類」ないし「美術品として価値のある刀剣類」を日本刀に限定したのは明らかに委任立法の限界を越えた違法な行政立法である。

3  なお、右登録規則四条二項は、日本刀についてのみの鑑定基準を定めたものであれば、委任立法の限界を越えたことにはならないが、外国刀剣について鑑定基準が定められていないとの理由で登録拒否処分はなしえない。

二  控訴人は本件登録拒否処分により本件サーベルを日本国内で所持することを禁止され、その所有権放棄を余儀なくされるのであり、かかる不利益は財産的価値の点からみれば財産権の侵害であり(憲法二九条)、研究資料及び美術品として所持したいとの欲求を妨げられるとの点からは幸福追求の権利の侵害である(憲法一三条)。また、登録対象が日本刀か外国刀剣類かによってその取扱に差別を設けるとの点では、憲法一四条の平等原則に抵触する。

そして、これらの権利が公共の福祉による制約を受けるのは当然としても、その制約は合理的な必要最小限のものでなければならないのであり、外国刀剣類を一律に登録対象外とすることが公共の福祉による合理的な制限であることは何ら論証されていない。

(被控訴人)

一 刀剣類についての登録制度は、一貫して文化財として価値のある日本刀の保護を目的としてきたのであり、銃刀法一四条が登録対象として保護すべきものとした「美術品として価値のある刀剣類」も、「文化財として価値のある日本刀」と同義に解すべきである。

なお、被控訴人は銃刀法二条の「刀剣類」と同法一四条の「刀剣類」とを別異に解釈しているのではなく、同条の「美術品として価値のある刀剣類」とは、登録制度の趣旨、銃刀法全体の体系に照らし「美術品として価値のある日本刀である刀剣類」を意味する旨主張しているのであり、したがって、また登録規則四条二項は何ら銃刀法一四条の委任の範囲を越えたものではない。

二 控訴人主張のように外国刀剣を所持することが憲法一三条所定の幸福追求の権利に含まれるとの点には疑義がある。そして、銃刀法は、危害予防という公共の福祉の観点から、原則として何人も銃砲、刀剣類を所持することを禁止し、その禁止解除の規定の一つとして同法一四条の登録制度があり、わが国の文化財保護と危害予防のため必要な規制との調和を図っているのであり、原則的禁止を解除して銃砲刀剣類の所持をいかなる方法、範囲で認めるのかはあくまでも立法政策の問題であるから、右登録制度についても憲法違背の問題が生じる余地はない。

理由

当裁判所も、控訴人の本件請求は理由がなく棄却すべきであると判断するものであるが、その理由は、次のとおり付加、訂正するほかは、原判決理由説示と同一であるから、これを引用する。

一  原判決一八枚目裏九行目の「日本民間人所有の武器に関する指令」を「日本民間人所有の武器引渡に関する指令」と改める。

二  原判決一九枚目裏一行目の次に行を改めて、次のとおり加える。

「右七条五項の委任に基づき同年一二月一日文化財保護委員会は同委員会規則第六号を公布したが、その七条は鑑定の基準として、原判決事実欄五1(四)(原判決八枚目表一五行目から同裏一二行目まで)記載のとおりの規定をした。」

三  原判決二〇枚目裏二行目の「文化財保護委員会は」を「文化財保護委員会の登録による規制は」と改める。

四  原判決二一枚目表八行目の「これらには」の次に「刀剣類で美術品として価値のあるものについては所持を許可するとしながら、これにより」を加え、同九行目の「審査規定」を「各号に該当するものは美術品として価値のあるものと認め審査に合格させることとした審査規定の四号後段」と改める。

五  原判決二一枚目裏五行目の「保持してきた」を「保持して鑑賞の対象としてきた」と、同五行目の「その理由」を「それが一般の武器と同一視されて接収されるのは不当であるとの理由」と、同八行目の「鑑定基準」から同九行目の「認められる」までを「鑑賞基準に順次引き継がれ、銃刀砲一四条も従来のこのような登録制度、鑑定基準を受け継ぐ趣旨で制定されたものであり、これら制度、基準を積極的に改める趣旨はなかったと認められるのであり、これを受けた登録規則も内容的には従来の鑑定基準を踏襲する形で制定されたものと認められ、それまで登録対象であった外国刀剣類がこの登録規則により登録対象から外されたと見る余地はない。」と、それぞれ改める。

六  原判決二三枚目裏二行目の「銃刀法一四条一項の趣旨に合致し」を「立法の経緯、目的を踏まえて銃刀法一四条一項の趣旨を明確にしたにすぎないというべきであり、しかも」と改める。

七  原判決二三枚目裏四行目の次に行を改めて次のとおり加える。

「なお、控訴人は立法事実を尊重するとしても、それのみでは外国刀剣類の登録を認めない合理性の説明にはならないと主張するが、登録制度が日本刀の文化財的価値に着目して危険性のために所持が原則として禁止される刀剣類のうち日本刀のみを対象とした登録制度を設けその所持に道をひらいた趣旨はすでに判示したとおりであって、そのような理由に欠ける外国刀剣に登録を認めないことを不合理であるとはいえない。

また、右判示のとおり、登録規則四条二項は銃刀法一四条一項の「美術品として価値のある刀剣類」すべてについての鑑定基準を定めたものであるから、外国刀剣についての鑑定基準が未制定であることを前提とした控訴人の主張は理由がない。」

八  原判決二四枚目表五行目の「したがって」から同六行目の「ものではない」までを「このように、「美術品として価値がある」と認めるべきものが日本刀に限定される結果、銃刀法一四条一項の「刀剣類」には「日本刀」以外は含まれないことになるだけであり、同法二条二項の「刀剣類」の定義規定と何ら矛盾するものではない」と改める。

九  原判決二四枚目表一二行目冒頭に「刀剣類は人の生命身体に危害を加える用具であるから、その所持が憲法一三条に基づく国民の権利に含まれると解することには重大な疑義があるが、」を加える。

一〇  原判決二四枚目裏四行目の「そして、」の次に「銃刀法一四条一項、」を加え、同六行目の「ここにおいて」を「危害防止という公共の福祉の観点から原則的な所持の禁止が容認される刀剣類について、文化財的価値のある日本刀の保護の観点から所持に道をひらいたものであって、外国刀剣について所持の道をひらかなかったからといって、財産権、幸福追求権の侵害として許されないとはいいがたい。そして、右登録制度において」と改める。

したがって、これと同旨の原判決は相当であり、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、控訴費用の負担について行政事件訴訟法七条、民訴法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 森綱郎 友納治夫 小林克已)

原審判決の主文、事実及び理由

主文

一 原告の請求を棄却する。

二 訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一 請求の趣旨

1 被告が原告に対し昭和五七年一一月一日付けでした別紙目録記載のサーベル二本の刀剣登録拒否処分を取り消す。

2 訴訟費用は被告の負担とする。

二 請求の趣旨に対する答弁

主文同旨

第二当事者の主張

一 請求原因

1 刀剣登録拒否処分

原告は、昭和五七年一〇月二八日、被告に対し銃砲刀剣類所持等取締法(昭和三三年法律第六号。以下「銃刀法」と略す。)一四条二項、銃砲刀剣類登録規則(以下「登録規則」と略す。)一条に基づき、自己所有の刃体が鋼質性の外国製刀剣である別紙目録記載のサーベル二本(以下「本件サーベル」という。)の登録を申請したところ、被告は、昭和五七年一一月一日右申請を拒否する旨の処分(以下「本件処分」という。)をした。

2 処分の理由

本件処分の理由は、抗弁記載のとおりであって、要するに右登録規則四条二項柱書が「刀剣類の鑑定は、日本刀であって、次の各号の一に該当するものであるか否かについて行うものとする。」と定めているところ、本件サーベルは、そもそも右の「日本刀」に該当しないから登録の対象とならないというものである。

3 しかし、登録規則四条二項の規定を本件処分の根拠とすることには不服がある。

よつて、原告は被告に対し、銃刀法一四条一項の登録の要件を具備していないとして本件サーベルの登録を拒否した本件処分の取消しを求める。

二 請求原因に対する認否

請求原因1、2の事実はいずれも認める。

三 抗弁

1 本件サーベルの登録要件の欠如(「刀剣類」の解釈)

(一) 銃刀法一四条に基づき「刀剣類」として登録を受けるためには、まず「美術品としての価値のある刀剣類」(同条一項)でなければならないが、この要件を充足するか否かの判断は、登録審査委員の鑑定に基づくことが必要であり(同条三項)、同鑑定の基準は、文部省令で定めるものとされている(同条五項)。

これを受けて、登録規則四条二項柱書は「刀剣類の鑑定は、日本刀であって、次の各号に該当するものであるか否かについて行うものとする。」と定めている。

(二) 本件サーベルが右登録規則四条二項にいう「日本刀」でないことは明らかである。

2 したがって、本件サーベルは銃刀法一四条一項の登録の対象となる「刀剣類」に該当しない。

四 抗弁に対する認否及び原告の主張

1 抗弁1の事実は認め、2の主張は争う。

2 登録規則四条二項の規定は、次のいずれかの理由により無効である。

(一) 銃刀法一四条の委任の範囲の逸脱

(1) 登録規則四条二項は、銃刀法一四条一項の登録に必要な登録審査委員の鑑定(同条三項)の基準として、同条五項の委任に基づき定められたものであるが、同条一項は、登録の対象となる刀剣を「美術品として価値のある」ものであれば足りるとし、他になんら制限を設けていない。そして、この「美術品として価値のある」との文言は、「芸術的、歴史的文化的な意義を有するが故に、鑑賞の対象としての価値を有する」という意味であって、かかる価値は日本刀、外国刀剣の区別なく認められるものである。

したがって、登録の対象となるか否かは、あくまでも美術品としての文化的価値の存否及びその程度によってのみ決せられるべきものである。

外国の刀剣にも、このような意味で美術品としての高い文化的価値を有するものが多いことは周知の事実である。そもそも、銃刀法が、銃砲、刀剣類等の所持による危害の防止を目的とし、銃砲又は刀剣類の所持を原則として禁止する(三条一項)一方で、一四条において、その登録制度を設け、登録を受けた銃砲又は刀剣類の所持を認めることにした趣旨は、銃砲又は刀剣類の中には美術品として文化的価値を有するものがあるから、そのようなものについて登録の途を開き、その所持を許し、愛好家の鑑賞、収集、保存の対象として活用を図ることが社会的にも有益である、という点にあることは明らかである。

登録規則四条二項が「刀剣類」の種類を日本刀に限定していることには全く合理性がなく、外国刀剣の有する文化的価値に対する不当な軽視が窺え、銃刀法一四条一項の趣旨を没却するものといわざるをえない。

(2) また、銃刀法一四条一項の「刀剣類」を日本刀の意に解する文理的根拠もない。

すなわち、同法において用いられている「刀剣類」の定義は同法二条二項に定められているとおりであって、それが外国刀剣をも含むものであることは自明であり、ひとり一四条一項の「刀剣類」のみ別異に解すべき根拠はない。そもそも法の規定というものは、何よりもまずその文言を通常人の健全な常識に照らして解釈されるべきものであって、文言からかけ離れた解釈を施すことは法に対する信頼を失わせることにもなる。

現に、登録規則は、銃刀法一四条一項の「古式銃砲」については外国製銃砲であっても登録の対象となる旨の規定をしている(四条一項)。古式銃砲については外国製も含むとしながら、刀剣類については日本刀に限定解釈する合理的根拠は存在しない。

(3) さらに、銃刀法は本来警察立法の性質を有するものであって、日本刀を扱う刀剣業者等の保護を図る立法ではない。

すなわち、同法は、本来国民に保障されている財産権の自由を公共の危害予防の見地から一般的に制限し、美術品として価値のある刀剣類に限って登録規則によって所持を許すこととしたものである。だとすれば、美術品である外国刀剣の登録を認めても、これにより本来の私人の財産権が回復するだけであって、特別の保護を付与するわけではないから、登録に関する限り日本刀と外国刀とはできるだけ同一の取扱いをすべきである。

(4) 現実の運用面においても、過去に一七四件の外国刀剣登録の事実が存在する。

仮に、外国刀剣が登録の対象となりえないものであるならば、これらの登録はすべて違法であり、当然取り消されるべきであるが、実際には取り消されていない。この事実は、外国刀剣の登録によって害される公益というものは存在しないことを証明するものであり、銃刀法一四条一項の登録対象を日本刀に限定する理由がないことを示すものである。

(5) 以上のとおり、法一四条一項の対象となる「刀剣類」を日本刀に限定した登録規則四条二項は、法の委任の範囲を越えた制限を課しているものであり、無効である。

(二) 憲法一三条、二九条及び一四条違反

憲法二九条、一三条により、外国で購入した外国刀剣についてもその所有権はできる限り尊重され、公共の福祉による制限は、社会国家的見地からの制約基準ではなく、警察目的による必要最小限のものでなければならない。

しかるに登録規則四条二項は、外国刀剣類の所持を全面的に禁止しており、必要最小限の規制の範囲を越えているうえ、銃刀法一四条の文言による保障機能を害し、国民の予測可能性を越えた規制をしているから、憲法二九条、一三条に反し、無効である。

また、同項は、外国刀剣の所有者と日本刀の所有者との間に全く合理性を欠いた差別を生じさせるものであって、憲法一四条一項の平等原則にも反し、無効である。

3 本件サーベルの美術的価値及び所持の目的

サーベルはもともとオリエントの斬撃用の刀に由来するもので、中世以来の古い歴史を持ち、祭礼の際に権威の象徴などとして用いられてきた歴史と伝統がある。

本件サーベル二本のうち一本は一八三四年頃に、うち一本は一九〇五年頃に制作されたものであって、いずれもスペイン戦争の際に、政府軍の上級将校により実戦で使用されたという由緒あるものである。保存状態も概ね良好で、著しいさびや傷、刃こぼれ等は見当たらない。

したがって、本件サーベルは歴史的価値はもとより、美術品としての価値も十分にある。

原告は、スペイン戦争について多年にわたり研究を行っており、同戦争に関する著作をライフワークとしようとする者であって、同戦争に関する多数の物品の収集に努めてきた。本件サーベルも、スペインのグラナダ市の骨董品店で購入した高価な刀剣であり、本件登録が拒否されたことによる原告の被害は甚大である。

五 登録規則四条二項の適法性についての被告の主張

1 登録制度採用の歴史的経緯

(一) 日本がポツダム宣言を受諾して後、連合国占領軍は昭和二〇年九月二日付一般命令第一号の一一項において「日本国大本営及日本国当該官憲ハ連合国占領軍指揮官ノ指示アル際、一般日本国民ノ所有スル一切ノ武器ヲ蒐集シ且引渡ス為ノ準備ヲ為シ置クベシ」との命令を発し、これに基づき、当時の内務省警保局長は、同年九月一五日付けをもって庁府県長宛文書を発し、一般国民の所有するすべての刀剣類について、これを各警察署に提出させるべく措置を講じたが、美術的、骨とう的価値のある刀剣は、警察署に登録し、提出の用意をなすにとどめ、中央より改めて指示のあるまで一応蒐集を見合わせることにした。

右の美術的、骨とう的価値のある刀剣の範囲・内容は、内務省警保局長から府県警察本部長宛の「民間武器引渡命令ニ対スル緊急措置ニ関スル件」と題する通知文書に次のとおり明記され、すべて「日本刀」に限られていた。

(1)国宝として文部大臣の指定ありたるもの

(2)重要美術品として文部大臣の認定ありたるもの

(3)重要美術品に準ずるもの

ア 明治前における刀剣にして有名刀工の銘あるもの

イ 明治前における刀剣にして無銘なるも有名刀工の作になるもの

ウ 明治以後における刀剣中、帝展、文展等に工芸品として出品せるもの

エ 明治以後の刀剣といえども神社、仏閣に奉納の目的をもって成作せられたるもの

オ いずれの時代たるを問わず恩賜刀、元帥刀等由緒あるものにして家宝たるの客観性を有するもの

なお、右の一般命令が出された際、当時の首相が、武器としての刀剣類を接収することはやむをえないが、愛刀家の鑑賞の対象である古来の日本刀は接収の対象から除外されたい旨連合国総司令官に申入れをして、同年九月四日、同司令官から覚書が出され、美術品である日本刀については個人保管を許すことになった経緯がある。

(二)(1) その後、数次にわたる民間武器引渡しに関する指令が出され、連合国占領軍による武器の回収が進められていく過程において、国宝ないし重要美術品等に当たる刀剣類のうち美術刀剣として回収を免除されるものが出てくるのであるが、昭和二一年五月になって、連合国占領軍は美術品に当たるか否かの判定を日本側に委ねるとともに、昭和二一年六月一日付けで銃砲等所持禁止令(昭和二一年勅令第三〇〇号)が公布され、この勅令によって地方長官は、刀剣審査委員の鑑定を経て(昭和二一年九月一七日付け同令改正勅令第四三四号にて追加)、美術品として価値のある刀剣類について所持許可を与えることとなり(一条)、現行の登録制度の前身ができあがった。

(2) そして、銃砲等所持禁止令一条一項三号の「刀剣類で美術品として価値のあるもの」との意義については、昭和二一年五月一六日の終戦連絡部横浜地方事務局局長官邸における銃砲等所持禁止令に関する会議で左記の審査規定が決定され、この解釈に基づき地方長官が審査決定をして所持許可をすることとされた。

左の一に該当するものは勅令第一条第二項第三号の美術品として価値のあるものと認め審査に合格させること

一 国宝、重要美術品に既に指定されたもの並にこれと同等の美術的及歴史的価値の認められる刀剣

二 明治時代以前(明治を含まない。)の各時代において後世まで名前の聞えた刀工の作、換言すると刀剣の専門家だけでなく、一般の美術的刀剣を愛好する人々が其の名を知っている程度の刀工の鍛えた刀剣及び、時代の如何を問わずそれほど名前の聞えていない刀工の鍛えた作であっても、その制作が優れていて美術的価値を有しているものと認められる刀剣

三 無銘であるために作者或は年代の詳細については遽かに判定し難いけれども、優れた制作であって、美術的価値が認められる刀剣

四 三代以上(祖父を含める)の祖先から家宝としてその家に伝わっている刀剣又は記念品としての刀剣

(三) ついで、昭和二五年五月二九日付け最高司令官代理の「日本民間人所有の武器引渡に関する指令」によって、従来の銃砲等所持禁止令は廃止され、新たに銃砲刀剣類等所持取締令(昭和二五年政令第三三四号。以下「旧取締令」という。)が制定された。この政令はいわゆるポツダム政令であるが、この政令の施行によって、美術品として価値のある刀剣類の取扱いは、従来の公安委員会(昭和二三年法律第一一号警察法施行に伴う関係法律の整理に関する法律により、所持許可権者が地方長官から公安委員会に改められた。)による許可制から文化財保護委員会の登録制に改められ、その事務は都道府県の教育委員会が取り扱うこととなった(七条、一〇条)。

右の制度改正の趣旨は、美術品として価値のある刀剣類及び火なわ銃式火器について、その取扱いを著しく簡素化すると共に、終戦直後の武器、凶器とみなす取締りの観点から、本来の日本の文化財の保護という文化的な観点へ重点が移行されたことにある。

(四) 文化財保護委員会は、昭和二五年一二月一日文化財保護委員会規則第六号を公布し、その七条において鑑定の基準を左のとおり定めた。

(鑑定の基準)

第七条 鑑定は、刀剣類が左の各号の一に該当するものであるか否かについて、行うものとする。

一 奈良、平安、鎌倉及び吉野時代に製作されたもの(甚しいつかれ、きず等により美観を失ったものを除く。)

二 室町時代以後に有名な刀工により製作されたもの(甚しいつかれ、きず等により美観を失ったものを除く。)

三 室町時代以後に製作されたもので、作者が有名でなく、又は明らかでないが、優れているもの(甚しいつかれ、きず等により美観を失ったものを除く。)

四 銘文が貴重な研究資料であるもの

五 やりであって標本的な様式を有するもの

六 前各号に掲げるものに準ずる刀剣類であって、その外装が工芸品として高い価値を有するもの

この基準は、終戦当時、日本政府の努力によって連合国占領軍への提出を免れた美術的、骨とう的価値のある「日本刀」と、その内容において何ら変容がないものである。

(五) しかし、旧取締令下においては、その規制の不備に乗じて銃砲刀剣類を悪用する者があり、危害予防の見地から所用の規制を加える必要が生じたため、昭和三三年三月、旧取締令は廃止されて新たに現行の銃刀法(昭和三三年法律第六号)が制定され、その一四条一項において「美術品として価値のある刀剣類の登録をする」と定められたが、これは旧取締令の規定と変わるものではない。

そして、文化財保護委員会としては、従前と同様に文化財保護の見地から銃刀法を運用していくこととしたが、前記の刀剣類の鑑定基準については、従来は日本刀の製作年代区分を設けていたものを、時代の上下に拘泥せず、主として美術的価値の観点から規定することとし、併せて、日本刀が登録の対象であることを明記した次のような現行の登録規則を制定した。

すなわち、登録規則四条二項は、「刀剣類の鑑定は、日本刀であって、次の各号の一に該当するものであるか否かについて行うものとする。

一 姿、鍛、刃紋、彫物等に美しさが認められ、又は各派の伝統的特色が明らかに示されているもの

二 銘文が資料として価値のあるもの

三 由緒、伝来が資料的価値のあるもの

四 前各号に掲げるものに準ずる刀剣類で、その外装が工芸品として価値のあるもの」と規定した。

また、昭和三三年三月二八日文化財保護委員会事務局長は、各都道府県教育委員会宛に「銃砲刀剣類登録規則の制定について」と題する通知を発し、登録規則四条の解釈について説明し、新たな鑑定基準に従って公正に登録審査を行うよう指導したが、右通知は、(1)日本刀を対象とするものであること、(2)日本製刀剣類でも登録要件を欠くものがあること、(3)外国製刀剣類は対象とならないこと等を内容とするものである。

(六) 以上のとおり、終戦後今日まで、美術品として価値のある日本刀を保護し、活用するために保存行政が行われてきたものであり、外国製刀剣類については登録の対象とならないものとして処理されてきた。そして、銃刀法一四条一項の「美術品として価値のある刀剣類」との文言も、昭和二一年六月一日公布の銃砲等所持禁止令以来の規定内容と同一であるから、銃刀法一四条一項には「日本刀」との文言こそ存しないが、日本刀であることが当然の要件なのであり、登録規則四条二項が「日本刀であって」と規定したのは右の要件を明記したに過ぎないのである。

2 日本刀の意義について

「日本刀」の名称は元来わが国にはなく、一一世紀後半の中国の書物に見られるところ、近代になってからわが国においても使用されるようになった。

今日、わが国で「日本刀」と呼んでいるのは、わが国古来の製作工程を経て造られた刀剣である。すなわち、原材料は玉鋼を主体として折返鍛練を行い、土取り(表面に粘土を塗り刃紋を表わす工程)を施し、更に焼入れをすることによって、鋭利さと美しい鍛え肌、刃紋が現される。このような製作方法は奈良時代以降に次第に発達し、平安時代になると刀身に作者銘を切り、地方別、系統的、作者別に作風の特色がわかるようになった。したがって、太刀、刀、脇指、短刀、剣、薙刀、槍などは、形態の違いはあっても製作工程が同じであるため、古来同じ日本刀として扱われてきている。

3 登録規則四条二項の適法性

(一) 銃刀法一四条一項の登録制度の立法趣旨

銃刀法は、鉄砲、刀剣類の所持に関する危害予防上必要な規制について定めるものであり(同法一条)、公共の福祉(安全)のため、原則として何人も銃砲、刀剣類の所持を禁止しており(同法三条一項本文)、三条一項各号のいずれかに該当する場合にのみその禁止が解除される。その場合の一つである都道府県公安委員会による所持許可については、所持の目的のみならず所持者についても規制している(同法四条一項各号、五条一項各号)。これとは異なり、文化庁長官による銃刀法一四条一項の登録は、所持の目的ないし所持者の資格を問わないのであり、前記1でみたとおり、我が国の文化財保護という観点に立ちつつ、危害予防上の必要な規制との調整を図ろうとする趣旨の下に設けられているものである

したがって、文化庁長官による登録制度は、刀剣類に係る我が国の文化財保護制度との整合性を保ちつつ、合目的的に解釈運用されるべきであるところ、我が国の文化財保護行政の基本を定める文化財保護法(昭和二五年法律第二一四号)によれば、刀剣類については、「我が国にとって歴史上又は芸術上価値の高いもの」が文化財(有形文化財)であると定義されている(同法二条一項一号)。

これを刀剣類についていえば、我が国の伝統的な製作技法により製作された前記2にいう日本刀が、いわゆる美術刀剣としてその対象となるものであり、このような観点の下に、銃刀法の前身である昭和二五年に制定された旧取締令において、文化財として価値のある刀剣類に係る登録の制度が新たに設けられ、日本刀について文化財保護の充実が図られ、現行登録制度に至っているのである。

(二) 銃刀法の美術刀剣類製作承認制度との関連

銃刀法における製作承認制度は、伝統的な製作技法により美術品として価値のある刀剣類を製作しようとする者については、文化庁長官の承認を得ることにより、当該刀剣類を製作し、かつ、製作の目的に従って所持することができるとするものである(銃刀法三条一項一〇号、美術刀剣類製作承認規則(昭和三三年文化財保護委員会規則第二号、以下「承認規則」という。)三条一項)。

同制度は、昭和二八年の銃砲刀剣類等所持取締令の一部改正(武器等製造法(昭和二八年法律第一四五号)附則四項による改正)による改正後の二条七号により設けられ、昭和三三年の銃刀法の制定により同法上の制度となったものであるが、その趣旨は、我が国の伝統的な日本刀の製作技術を保存し、ひいてはその製作にかかる美術品として価値のある日本刀を文化財保護の観点から保護しようとするものである。すなわち、日本刀については、鍛練技術が世界に誇る日本の伝統的技術として、他国に存在しない歴史を有しているため、現在でも刀匠の中には日本の伝統的技術保存者として重要無形文化財、いわゆる人間国宝として指定された者がいるのであるが、このような伝統的技術の保存を図る観点からも、これら刀匠の製作に係る日本刀は、美術品として価値のあるものとして個人が所持できるとされたのである。

右製作承認制度が設けられた趣旨に鑑みても、銃刀法一四条一項に定める「美術品として価値のある刀剣類」の登録制度は、我が国にとって文化財として価値のある日本刀を所持の対象としていることが明らかである。

(三) 外国製刀剣類を登録の対象としない理由

いかなる方法で国民に刀剣類の所持を認めるかは、あくまで立法政策の問題であるが、立法の経緯から明らかなように、わが国では文化財たる日本刀の保護を目的として登録制度を設けている。

日本人は美術品として価値のある日本刀をまさに美術品そのものとしてとらえており、銃刀法も、文化財保護の観点から、所持許可とは別の登録という比較的ゆるやかな規制によって所持を認めるのに対し、外国製刀剣類は、原則として所持を禁じ、一定の要件を満たした場合にのみ、許可による所持が認められるものとした。

仮に、外国製刀剣類を登録の対象に含めることにすれば、登録制度を設けた趣旨及び銃刀法全体の体系の重大な変更となり、ひいては登録制度全体を崩壊させる危険性がある。日本刀は、倉などから発見される場合を除いては、製作承認にかかるものしか登録の対象にならないが、外国製刀剣類は数量的に限界がないので大量に輸入、販売される虞れがあり、登録本数が非常に増加し、危険性が増大する可能性が大きいものである。

(四) 登録規則四条二項の趣旨

右(一)ないし(三)でみたとおり、銃刀法一四条一項の「美術品として価値ある刀剣類」とは、日本刀であって美術的な価値を有するもの、換言すれば文化財としての価値のある日本刀と同義と解すべきである。

したがって、登録規則四条二項が登録の対象を「日本刀」と規定しているのは、銃刀法自体の解釈から導かれる登録の対象を確認的に明記したものにほかならず、法律の委任の限界を逸脱したものではない。

(五) 過去の外国製刀剣類の登録事例について

昭和二五年一一月二〇日の旧取締令施行以来、被告において登録を認めた刀剣類の件数及びそのうち外国製刀剣類の件数は別表記載のとおりであり、右の外国製刀剣類の登録がなされた事情は次のとおりである。

(1) 昭和二一年六月一五日付けで銃砲等所持禁止令が公布、施行され、それに伴い、地方長官は、「刀剣類で美術品として価値のあるもの」について所持許可をしうることとなり、右の基準として審査規定が定められ、その四項で「三代以上(祖父を含める)の祖先から家宝としてその家に伝わっている刀剣、又は記念品としての刀剣」は、許可の対象とされた。そこで、同項に該当するとして刀剣の所有者から昭和二一年六月一五日以降所持許可申請がなされ、地方長官(昭和二三年から公安委員会)によってその所持が許可されてきた。右「記念品としての刀剣」とは当時の解釈としても、日本刀に限るものであったが、文言が一般的表現であるとともに、指導が徹底しなかったこと等により、個々の刀剣審査委員において、旧取締令が施行された同二五年一一月二〇日までの間、許可申請のあった外国製刀剣類についても便宜所持を認めてきたいきさつがあった。

(2) 右の所持許可にかかる多数の刀剣については、旧取締令の施行に伴い、昭和二六年三月三一日までに所持許可証から登録証に書換をすることになり、現実には昭和二七年六、七月ころに書換処理が終了した。

昭和二七年の全刀剣登録件数約一七〇〇〇件のうち七九件の外国製刀剣類の登録があったが、これらの多くは所持許可証の書換によるものであり、従前の所持許可証による所持を引続き認める意味で、これに応じたものである。また、新規登録申請については、記念品としての外国製刀剣類につき、従前所持許可を得ていたにもかかわらず、登録証の書換期間を徒過し、登録の失効したものについて、差別することは人情としても忍びない等の理由で、刀剣審査委員の判断でこれを認めたものである。すなわち昭和二九年度に一件、同三一年度に七五件、同三二年度に一九件の新規登録が認められているが、これらは、右の事情により昭和二七年度に取扱った事例に従い、刀剣審査委員が登録を認めたものであり、昭和三三年度以降は外国製刀剣類の登録は全く認められていない。

右のとおり、外国製刀剣類の既登録分は、刀剣審査委員の旧取締令や文化財保護規則六号の鑑定基準に反する誤った判定に基づいてなされたもので、その数も少なく、右の経緯に照らし、その各登録に重大かつ明白な瑕疵があるともいえないものである。したがって、右登録の事実は、登録の対象となる刀剣類を日本刀に限定している被告の登録制度の解釈、運用を左右するものではない。

4 外国製刀剣類の所持規制と憲法一三条、一四条一項、二九条との関係

原告が主張するように、外国製刀剣類の所持が憲法一三条所定の個人の幸福追求の権利に含まれるとする点には疑義があるが、仮に右幸福追求の権利に含まれるとしても、同条にいう個人の幸福追求の権利は、公共の福祉のため必要のある場合には相当の制限を受けることがあるのは文理上明らかである。また、憲法一四条一項で禁止されている差別は、合理的理由のない差別であって、事柄の性質に応じた合理的と認められる差別的取扱いをしても、なんら違憲ではない。さらに、財産権も公共の福祉のために合理的な制限に服することは文理上、判例上明らかである。

そこで、銃刀法一四条一項の「美術品として価値のある刀剣類」を日本刀に限ることの合理的理由の有無が問題となるが、前述した登録制度の立法趣旨から明らかなように、所持禁止の原則の例外として、我が国の文化財保護という公益の増進を図るために、「美術品として価値のある刀剣類」を日本刀に限定することには合理的理由がある。また、外国製刀剣類には数量的限界がないので、大量に輸入販売された場合の危険性を防止するという公共の福祉にも適うものである。加えて、外国製刀剣類の個人による所持については、銃刀法三条一項三号、四条の規定により都道府県公安委員会の許可を得てする方法もあるから、その所有者を不当に害することにはならない。

したがって、原告主張のような憲法違反の問題は生じる余地がない。

六 原告の反論

1 立法の経緯について

立法の経緯、立法担当者の意図は法解釈の参考資料としての意味はあるが、法律自体は立法者の意思から独立した時点から客観的な存在となるものであって、その文言から逸脱した解釈をすることは、解釈による立法を許すことになり、とうてい肯認されるものではない。

また、もし、銃刀法等の立法者が登録・所持の対象となる刀剣類を日本刀に限定する意図があったのであれば、その旨の文言によってこれを規定すべきであるのに、そのような規定が存在しないという事実は、立法担当者が対象を日本刀に限定しなかった証左とみることができる。

2 文化財保護法との関連について

銃刀法一四条一項の「美術品として価値のある」刀剣類を、文化財保護法にいう「文化財」と同義に解することは、銃刀法が警察的取締りを目的とした法律であり、文化財保護法が我が国固有の文化の保護、伝承を目的とする保護立法であるという違いを忘れた根拠のない恣意的解釈である。

銃刀法一四条一項の「美術品として価値のある」との概念には、わが国固有の歴史上、芸術上の価値の有することのみを指すという限定はなく、外国の歴史上、芸術上の価値をも包含するものである。

他方、文化財保護法二条一項は、その保護の対象たる文化財を「有形の文化的所産で我が国にとって歴史上又は芸術上価値の高いもの」と定義し、特に日本の文化に限定する趣旨で「我が国にとって」との文言を明記しているのである。

したがって、銃刀法一四条一項の「美術品として価値のある」との概念は文化財保護法の「有形の文化的所産」という概念に近いものであって、その中に、わが国にとって価値の高いもの、すなわち「文化財」と、外国の歴史上、芸術上の価値の高いものの双方が含まれているのである。

3 所持許可制度の欠如

被告は、外国製刀剣類についても銃刀法の所持許可制度(三条一項三号、四条)による所持が可能であると主張するが、銃刀法は許可と登録とで取扱いを全く異にしており、許可は目的及び所持人についても規制するものである。すなわち、この許可制度は、あくまで刀剣の実際使用という面についての所持を予定しているため、鑑賞用としての所持は、右の許可事由のいずれにも該当せず、現実に許可が得られる可能性は皆無であって、被告の主張は机上の空論である。

4 所持本数増加による危険の増大について

外国製刀剣類を登録の対象にした場合、それが大量に輸入販売される虞れがあるか否かはあくまで推測の域に止まる。また、相当な美術的価値を有する刀剣でない限り登録を許さないこととすれば大量の輸入販売の虞れもなく、その点にこそ登録制度の意義がある筈である。したがって、所持本数が非常に増大するとの議論には論理の飛躍があるといわざるをえない。

また、外国の刀剣は、大多数の日本国民にとっては、その外観、形状、用法等の点において武器としてのなじみが薄く、これを見たときに感じる脅威、不安は日本刀に比べてはるかに小さい。

したがって、外国製刀剣類が日本に流入しても、人の生命、身体に対する危険ないしその可能性が増大することはありえない。

第三証拠〈省略〉

理由

第一 請求原因1(刀剣登録拒否処分)及び2(処分の理由)の事実は当事者間に争いがない。

第二 そこで、本件処分の適法性について判断する。

一 登録規則四条二項の効力

1 銃刀法一四条と登録規則四条二項との関係

(一) 銃刀法は、銃砲、刀剣類の所持に関する危害予防上必要な規制をすることを目的とし(同法一条)、その三条一項において銃砲及び刀剣類の所持を一般的に禁止したが、職務、業務その他社会生活上所持の相当性が認められるとした同項各号列挙の場合に限って、右禁止から除外するものとした。

右の除外事由の一つとして、同項六号は、「法第一四条の規定による登録を受けたもの(変装銃砲刀剣類を除く。)を所持する場合」を掲げる。

(二) 右登録については、銃刀法一四条一項が、「文化庁長官は、美術品若しくは骨とう品として価値のある火なわ式銃砲等の古式銃砲又は美術品として価値のある刀剣類の登録をするものとする。」と定め、その登録は、「登録審査委員の鑑定に基づいてしなければならない」(同条三項)ものとし、同鑑定の基準は文部省令で定めることとした(同条五項)。

登録規則四条二項は、右法律の委任に基づいて鑑定の基準を定めた文化財保護委員会規則であり、文部省令としての効力を有するものである(昭和四三年法律第九九号(行政機関の簡素化のための総理府設置法等の一部を改正する法律)附則五項)。したがって、右鑑定の基準は、銃刀法一四条一項が刀剣類の登録制度を定めた趣旨に適合するものでなければならないことは自明の理である。

2 銃刀法における登録制度の意義

銃刀法一四条一項の登録制度は、同項の文言から明らかなように、古式銃砲についてはその美術的もしくは骨とう的価値に、刀剣類についてはその美術的価値にそれぞれ着目し、このような価値があるものは所持禁止の対象から除外することが、危害予防という一般的な要請(警察目的)にも増して社会的に有益であるとの観点に立って、規定されたものである。そして、このような価値は、そのものを何人が所持するかには関わりなく、そのもの自体の属性(物的事情)に由来するものであり、かつ、その価値についての審査・確認を必要とすることから、登録という制度が採用されたものと考えられる。

3 銃刀法一四条の登録制度の制定経緯

登録によって所持が認められる「美術品として価値のある刀剣類」とは何かについて、銃刀法一四条はこれを明示した規定をおいていない。そこで、まず、同条制定の経緯から検討する。

(一) 原本の存在及び成立に争いがない乙第一号証の三、第四号証の一ないし四、第五号証、成立に争いがない乙第一ないし第三号証の各一、二、第六号証の一、二、第七号証、第八号証の一、二、第九ないし第一三号証によれば、次の各事実が認められ、この認定に反する証拠はない。

(1) 日本がポツダム宣言を受諾して後、連合国占領軍(以下「占領軍」という。)は、民間の武装解除の一環として、昭和二〇年九月二日付け一般命令第一号一一項において、「日本国大本営及日本国当該官憲ハ連合国占領軍ノ指揮官ノ指示アル際、一般国民ノ所有スル一切ノ武器ヲ蒐集シ且引渡ス為ノ準備ヲ為シ置クヘシ」との命令を発した。

右命令を受けた内務省警保局長は、一般国民の所有する全ての刀剣類を各警察署に提出させるための措置を講じたが、美術的、骨とう的価値がある刀剣は、警察署に登録させて提出の用意をするにとどめ、あらためて指示があるまで収集を一応見合わせた。

また、昭和二〇年一〇月一二日付け内務省警保局長から府県警察部長宛の通知によると、右の美術的、骨とう的価値の高いものとして、次のとおり指定されている。

ア 国宝として文部大臣の指定のあったもの

イ 重要美術品として文部大臣の認定のあったもの

ウ 重要美術品に準ずるもの

i 明治以前の刀剣で有名刀工の銘のあるもの

ii 明治以前の刀剣で無銘であるが有名刀工の作になるもの

iii 明治以後の刀剣中、帝展、文展等に工芸品として出品されたもの

iv 明治以後の刀剣であっても、神社、仏閣に奉納の目的で作られたもの

v 作られた時代を問わず、恩賜刀、元帥刀など由緒があり、家宝としての客観性を有するもの

さらに、同年一〇月二三日付け占領軍総司令官発日本政府宛覚書においては、「美術ノ対象ト認メラルル刀剣」は武器引渡から除外され、日本政府が個々の認可及び許可証の発給をすることと定められていた。

右に見たように、美術品たる刀剣が占領軍への引渡の対象から除外されたのは、日本政府が、愛刀家の鑑賞の対象である日本古来の刀剣類までもが一般の武器と同一視されて接収されることに強く抵抗し、占領軍の理解を求めて折衝した成果であった。

(2) 昭和二一年六月一日、銃砲等所持禁止令(昭和二一年勅令第三〇〇号)が公布され、「刀剣類で美術品として価値のあるもの」(一条一項三号)は、地方長官の許可を得て所持できることになり、同令のその後の改正により、右の許可をなす場合には、刀剣審査委員の鑑定を経るものとされるに至った。

右の銃砲等所持禁止令の公布に先立ち、占領軍第八軍憲兵司令部の了承を得て、「刀剣類で美術品として価値のあるもの」の範囲を定めた審査規定が制定されたが、その内容は、事実欄五(登録規則四条二項の適法性についての被告の主張)1(二)(2)記載のとおりであった。

(3) 次いで、昭和二五年五月二九日、占領軍総司令官代理から日本政府宛覚書「日本民間人所有の武器に関する指令」が出され、従来の占領軍の覚書は廃止されて、左記の刀剣類については民間人の所有が認められることになった。

ア 漁業、狩猟などを目的とするひ首その他の武器

イ 許可された博物館、展覧会の収集物、許可された業者又は舞台用として映画、演劇会社の所有する刀剣類

ウ 美術、骨とう品又は祖先伝来の刀剣類

これに伴い、日本政府は、右覚書に従った取締りのために、新に必要な措置を講じることになり、ここに旧取締令(昭和二五年政令第三三四号)が制定され、昭和二五年一一月二〇日施行された(銃砲等所持禁止令は廃止された。)。

旧取締令七条は、登録について次のように規定した。

(登録)

第七条 文化財保護委員会は、美術品若しくは骨とう品として価値のある火なわ銃式火器又は美術品として価値のある刀剣類の登録をするものとする。

(中略)

3 第一項の登録は、刀剣審査委員の鑑定に基づいてしなければならない。

(中略)

5 第一項の登録の方法及び手続、第三項の刀剣審査委員の任命及び職務並びに同項の鑑定の基準及び手続は、委員会規則で定める。

(4) 当時の立法担当者は、右の制度改正の趣旨について次のとおり説明している。

すなわち、従来公安委員会の所管の下に所持の許可をしていた美術刀剣類及び火なわ銃式火器は、文化財に準じるものとして、その保護、活用という観点から、これに係る事務を文化財保護委員会に移管すると共に、登録された美術刀剣類及び火なわ銃式火器は所持禁止から除外し、何人もこれを所持できることとした。これに伴い、その活用と保護とを円滑にするために登録制度が採用されたものである。

従来の許可制度の下にあっては、美術刀剣類も未だ凶器の一種とみて、治安面での取締りが強く働いていた。しかし、日本刀は我が国においてだけ製作され、護持されてきた独自の文化財であり、今日では、もはや武器もしくは凶器という観念でこれを律する者は殆どなく、その優れた美しさを鑑賞する芸術品として強い関心の対象となっている。そこで、美術刀剣類を広義の文化財とみて、その保存と活用を図らねばならないとする精神によって誕生したのが右の登録制度である、と。

(5) その後、旧取締令の規制の不備に乗じて銃砲刀剣類を悪用する例が見られたので、危害予防という警察目的の見地から必要な規制を整備することになり、昭和三三年四月一日から現行の銃刀法(ただし、当時は「銃砲刀剣類等所持取締法」といい、昭和四〇年法律第四七号により現行の件名に改められた。)が施行され、旧取締令は廃止されたが、登録に関する規定の文言は同法と旧取締令とで差異がない。

銃刀法の施行に伴い、「美術品として価値のある刀剣類」の鑑定基準については、文化財保護委員会規則第一号として現行の登録規則が制定されたが、ここにおいて、従来は製作年代で区分していた基準を改めたほか、「日本刀」を対象とするものであることが明示された。

そして、昭和三三年三月二八日付け文化財保護委員会事務局長から各都道府県教育委員会教育長宛通知において、右「日本刀」とは、武用又は鑑賞用として伝統的な製作方法によって鍛練し、焼き入れを施したものをいい、やり、なぎなた、ほこ等もこれに含まれるとの解釈が示された。

(6) その後、昭和四三年法律第九九号による銃刀法の改正があり、銃刀法一四条の登録は文化庁長官が行い(文化財保護委員会は廃止された。)、そのための鑑定の基準は文部省令によることとなったが、右(5)の文化財保護委員会規則第一号の登録規則はこの文部省令としての効力を有するものとされた(この点は、第二、一1(二)で判示した。)。

(二) 右にみたところによれば、占領軍側が前記(一)(1)の覚書や(3)の覚書において「美術」という語にいかなる意味をもたせたかはともかく、少なくとも日本政府の当局者が所持禁止から除外されるべき刀剣類として考えてきたものは、日本人が伝統的に保持してきた日本刀及びこれに準じるものであったことは明らかと言わなければならない。

そして、講和条約発効後の法制にあっても、前記(3)(4)の旧取締令及びこれを受けた文化財保護委員会規則第六号、前記(5)(6)の銃刀法を通じて、所持禁止の対象から除外されるべき「刀剣類」とは、日本刀であることを当然の前提として立法がなされ、その運用の指針となる行政解釈も同じ前提に立っていたことが窺われる。

4 登録制度の運用の実際

前掲乙第九号証及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。

(一) 昭和二五年度以降に旧取締令及び銃刀法により登録された刀剣は、別表のとおりである(銃刀法が制定された昭和三二年度までの間に、同表のとおり外国刀剣についても登録があったことは当事者間に争いがない。)。

(二) 右外国刀剣の登録例を生じた主な原因は、旧取締令が施行された昭和二五年までの間にある。すなわち、この期間は前記3(一)(1)の一般命令第一号及びこれに基づく銃砲等所持禁止令によって処理されていたが、これらには所持を許可される刀剣類を日本刀に限る旨の明文がなく、しかも、その審査規定には「記念品としての刀剣」というあいまいな基準をも掲げていた。そのため、「記念品」として刀剣審査委員に対して申請のあった外国刀剣についても許可が与えられる例が出ていたところ、旧取締令の施行に伴い、これを登録証に書き替える段になって、従前の許可を覆すに忍びないとして、右許可を旧取締令に基づく登録として引き継いだものが、右外国刀剣の登録例の殆どである。

(三) したがって、同表に明らかなとおり、銃刀法施行後は外国刀剣の登録例は一件もない。

5 検討

(一) 以上のとおり、一部の外国刀剣が混在はしたが、専ら、伝統的に日本人が保持してきた日本刀で美術的価値があるものについて、その理由によって、一般命令第一一号に基づく武器収集及び占領軍への引渡の対象から除外されたものであり、この趣旨が、多少の文言の改変を伴いながら、そのまま銃砲等所持禁止令における審査規定、旧取締令における鑑定基準を経て、銃刀法における登録規則に順次引き継がれてきたものと認められる。

(二) 一方、旧取締令が制定される約半年前の昭和二五年五月三〇日に文化財保護法が制定されており、また、旧取締令が刀剣類等の登録をする主体を文化財保護委員会と定めていたことからみても、同令に基づき登録の対象となる刀剣類とは、文化財保護法にいう有形文化財(これを同法二条一項一号は「我が国にとって歴史上又は芸術上価値の高いもの」と定義する。)、又はこれに準じて取り扱うのが相当であるような文化財的価値を有するものを念頭において、立法がなされたものと考えることができる。

そして、銃刀法も、その制定当初において、右委員会が登録の主体であったことからみて、右と同様と考えられ、更に、昭和四三年法律第九九号により文化庁長官が登録の所管庁となった後も同様と考えられる。

(三) そこで、右のような文化財もしくは文化財的な価値を有する日本刀の所持について、他の外国製刀剣類の所持と異なる取扱いをすることの合理性について検討する。

弁論の全趣旨によれば、日本刀とは、原材料に玉綱を主体としたものを用い、折返鍛練を行い、土取りを施し、焼入れをすることによって製作されるものであり、その名のとおり、我が国独自の製作方法と様式美を持った刀剣であること、このような製作方法は奈良時代以後に次第に発達したものであるが、平安時代以降は刀身に作者名を切るようになり、各派の作風の特徴が刀剣自体に具現されていることが認められる。

そうであれば、このような我が国古来の伝統的な製作方法に基づいた日本刀ないし日本刀の製作技術を、我が国が諸外国に誇ることのできる文化財として保護の対象とすることには、合理的な理由があるものと言わなければならない。

(四) 更に、銃刀法三条一項一〇号は、「文化庁長官の承認を受けて刀剣類の製作をする者がその製作したものを製作の目的に従って所持する場合」を刀剣類の所持禁止の除外事由と定め、これに関する承認規則(昭和三三年三月三一日制定、昭和四三年法律第九九号により文部省令としての効力を有するもの)を制定している。

右承認規則の内容並びに日本刀ないし日本刀の製作については右のとおり文化財として広く承認される域に達している事実及び我が国では日本刀以外の刀剣類の製作についてみるべき何らの実績もないこと(このことは公知である。)等に鑑みれば、銃刀法三条一項一〇号が製作承認制度を設けた趣旨は、我が国の伝統的な日本刀製作技法を無形文化財として保護することにあるものと解さざるをえない。したがって、同条項にいう製作承認を受ることのできる刀剣類とは、日本刀に限られることになるのは当然である。

(五) 右にみた登録制度の制定経緯及びその運用の経緯、銃刀法三条一項一〇号及びこれに基づく承認規則の存在並びに文化財保護法の規定の趣旨を総合考慮すると、銃刀法は、登録と製作承認という二つの制度によって、日本刀については特別に文化財としての保護を図っているものと解される。

そうすると、右登録制度もその趣旨で解釈されるべきであり、銃刀法一四条一項によって「美術品としての価値のある」ものとして保護の対象となる刀剣類とは、我が国の前記伝統的技法を駆使して製作された、文化財として保護すべき価値のある「日本刀」を意味するものと解するのが相当である。

なお、日本刀でない一部外国刀剣が既に登録されている事実は前記4認定のとおりである。しかし、これらは、同認定のとおり占領軍の一般命令第一号が発せられた当初の武器収集の機会に、たまたま所持が認められたものが、その後、登録制度に切り替えられて、本来は法の趣旨から逸脱した、いわば温情的な扱いを受けているに過ぎない。したがって、銃刀法及び登録規則制定後の新規登録にあっては、かかる例外はないのであるから、右既登録の事実もなんら右の解釈を左右するものではない。

(六) したがって、登録規則四条二項が、銃刀法一四条一項所定の登録制度の対象となり得る刀剣類の鑑定基準を定めるにあたって、その基準の一つとして、「日本刀であって」と明示したことは、銃刀法一四条一項の趣旨に合致し、合理的理由を備えたものであって、なんら同条五項の委任の範囲を超えたものではない。

二 原告のその他の主張について

1 原告は、まず、銃刀法一四条一項にいう「美術品として価値のある」とは「芸術的、歴史的、文化的な意義を有するが故に鑑賞の対象としての価値を有する」という意味であるから、この意味において日本刀と外国刀剣とを区別する理由はない、また、銃刀法においては、二条二項で「刀剣類」の用語の定義がされており、これは日本刀のみならず外国刀剣をも含んでいることは明らかであるから、同法一四条一項の「刀剣類」のみを日本刀に限定する解釈は許されない、更に、銃刀法は警察立法であり、日本刀を扱う刀剣業者を保護する法律ではないから、外国刀剣と日本刀とは登録に関する限り同一の取扱いをすべきであると主張する。

しかし、右にみたとおり、刀剣類に関する登録制度は、専ら我が国の文化財の保護の観点から解釈すべきものである。銃刀法一四条一項も、この趣旨を、「美術品として価値のある刀剣類」との文言及び登録・審査事務の所管庁を文化庁長官(文化財保護行政の所管庁でもある。)と定めたことによって表現したものと解される。

したがって、同法二条二項の定義規定も、銃刀法一四条一項の「刀剣類」を「日本刀」として解釈することを妨げるものではない。この理は、前述の製作承認制度を定めた銃刀法三条一〇号が、単に「刀剣類」と規定し、「日本刀」の字句を用いないでおいて、これを日本刀に限定した制度と解釈させるのと軌を一にするものである。

2 また、原告は、登録規則四条二項が憲法一三条、二九条、一四条に違反すると主張する。

仮に、原告主張のとおり、外国刀剣の所持が憲法一三条の個人の幸福追求の権利に含まれるとしても、同条にいう個人の幸福追求の権利は、公共の福祉のため必要がある場合には、相当の制限をうけるものであり、このことは同条の明示するところである。この理は憲法二九条の財産権の保障についても同様であり、公共の福祉のため必要がある場合は、私有財産権も相当の制限を受けるものである。また、憲法一四条の平等原則も、合理的な理由に基づく取扱いの差異まで否定する趣旨でないことはいうまでもない。

そして、登録規則四条二項は、前記銃刀法の警察目的である危害防止と文化財の保護、活用という公共の福祉に関わる二つの要請を調和させるものとして、日本刀について登録制度を開いたものであり、ここにおいて日本刀と外国刀とを区別し、所持すなわち登録の上で取扱いに差異を設けたことには合理的な理由があることは、すでに判断したとおりである。再言すれば、日本刀が外国刀剣と比べて、登録制度の上で特別に取り扱われるという差異は、前記判示のとおり、我が国が諸外国に誇りうる伝統の所産である文化財を保護するという社会的・文化的要請に対して、所持禁止による危害予防という一般的要請に優る価値が認められることに由来するものであり、この差別は合理的なものということができる。したがって、登録規則四条二項は憲法一三条、二九条及び一四条に違反するものではない。

三 要約

以上のとおりであって、本件サーベルは登録規則四条二項にいう「日本刀」に該当しないから、同条項に基づき、原告の同サーベルの登録申請を拒否した本件処分は適法なものであることが認められる。

第三 結論

よって、原告の本訴請求は理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担について行訴法七条、民訴法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

目録

一 サーベル 全長(刃)約七八センチメートル

一 サーベル 全長(刃)約七七・五センチメートル

別表

年度別登録件数及び外国刀剣件数

年度

件数

外国刀剣数

昭和25年度

約22,000件

0件

昭和26年度

約14,000件

0件

昭和27年度

約17,000件

79件

昭和28年度

約3,000件

0件

昭和29年度

約2,945件

1件

昭和30年度

3,465件

0件

昭和31年度

21,786件

75件

昭和32年度

10,261件

19件

昭和33年度以降

約134,000件

0件

174件

〔外国刀剣の内訳〕

1 蕃(蛮)刀 81件

2 青龍刀・支那刀 11件

3 ジャワ、インド、アラブ、トルコ、蒙古 38件

4 その他 44件

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